約 3,212,907 件
https://w.atwiki.jp/youtube7818/pages/21.html
YouTubeプライド動画の最新情報 YouTubeプライド動画 showrss プラグインエラー RSSが見つからないか、接続エラーです。 #bf NEWSPRIDE 遥海、メジャー1stアルバムジャケ写&初回生産限定盤Blu-ray収録内容公開 「Pride」ライブ映像も - リアルサウンド 【CBD4000mg配合】 CBDトリートメントボディスキンケアオイルを12月中旬より販売開始致します。PROUD CBD - PR TIMES LGBTQ+の取り組み指標「PRIDE指標」※1において最高評価の「ゴールド」を5年連続受賞 - PR TIMES ヒプステ初のライブ公演「Battle of Pride」Blu-ray/DVDのトレーラー公開(動画あり) - ステージナタリー ASKAが語る「PRIDE」への想い、チャゲアスの代表曲をセルフカバーした理由(Rolling Stone Japan) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース TVアニメ『プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~』12月8日(水)放送の第10話先行カットとあらすじを解禁! - PR TIMES 【アイプラ】リセマラは必要?当たりキャラランキング【IDOLY PRIDE】 - Gamerch(ゲーマチ) 「IDOLY PRIDE」が“Google Play ベスト オブ 2021”でクリエイティブ部門賞を受賞 - 4Gamer.net アイドルマネジメントRPG『IDOLY PRIDE』にてTRINITYAiLEの新曲「lumière」がゲームに追加!(アスキー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「IDOLY PRIDE」2ndアルバムの収録内容&ジャケット公開(音楽ナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 日光市を舞台とした東武鉄道と「プラオレ! ~PRIDE OF ORANGE~」のコラボ企画が11月20日に開始 - 4Gamer.net TVアニメ『プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~』初のコラボカフェが12月15日(水)より池袋で開催決定! - PR TIMES TVアニメ『プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~』発の声優ユニット「SMILE PRINCESS」、May’nが歌うOP&ED主題歌CDが本日発売開始! - PR TIMES LGBTQ+当事者であることをカミングアウトした企業経営者が、未来の職場づくりについて語る。10周年を迎えたLGBTQ+と職場を考えるカンファレンス「work with Pride 2021」 にて。 - PR TIMES もうひとつの自分の髪へ。メンズウィッグ新商品 『レクア プライド(REQUA PRIDE)』 誕生! - PR TIMES デロイト トーマツ、LGBT+への取り組みを評価する「PRIDE 指標」において4 年連続でゴールドを受賞:紀伊民報AGARA - 紀伊民報 IDOLY PRIDEプロジェクト始動2周年、アニメ放送開始1周年を記念して、「IDOLY PRIDE ポップアップショップ」をマルイにて開催決定! - PR TIMES 元PRIDE”ハリトーノフがTKO勝利も呆然、早すぎるレフェリーストップに会場は騒然=海外MMA(イーファイト) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『IDOLY PRIDE(アイドリープライド)』が“Google Play ベスト オブ 2021”のユーザー投票部門にノミネート! | スマホゲーム情報ならファミ通App - ファミ通App 「IDOLY PRIDE」に一ノ瀬怜と早坂芽衣のデュエット曲“ココロDistance”が追加 - 4Gamer.net 介護の力を拡張・強化するドリームチームがキックオフ!KAiGO PRiDEプロジェクトに全国から8団体が新パートナーとして参加! - PR TIMES 【アイプラ】IDOLY PRIDE生放送(2021年10月1日放送)の最新情報まとめ【アイドリープライド】 - AppMedia(アップメディア) SHIBUYA SCRAMBLE FIGURE、メディアミックスプロジェクト『IDOLY PRIDE』より、「IDOLY PRIDE 長瀬麻奈」1/7スケールフィギュアの新カットを公開! - PR TIMES Canadian pride | ニュースで英語を学べる The Japan Times Alpha オンライン - The JapanTimes Alpha 音無むおん、新曲「己我Pride」を10/31リリース 直筆サイン入りカード付CDは10/23より予約開始 - PANORA TVアニメ「プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~」OP&ED主題歌MVが公開 - 4Gamer.net LGBTQ+と職場を考えるカンファレンス「work with Pride」、11月11日(木)・12日(金)に、10周年記念オンライン開催。「Equity」と「Well-being」をテーマに据えて。 - PR TIMES TVアニメ『プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~』オープニング主題歌『ファイオー・ファイト!』リリースイベント【3回目】 - アニメハック ASKA・初シングルカット『PRIDE』リリース&MV全編公開中 - PR TIMES QualiArts、『IDOLY PRIDE(アイプラ)』で「白と黒の祝福ガチャ」を開催中 | gamebiz - SocialGameInfo プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~ | あらすじ・スタッフ・声優 - コミックナタリー - コミックナタリー 女王蜂ツアー「夜天下無双」より「PRIDE」ライブ映像公開(音楽ナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「IDOLY PRIDE」単独ライブ開催、アルバムの収録内容発表(音楽ナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 渋スクフィギュア、メディアミックスプロジェクト『IDOLY PRIDE』より、「IDOLY PRIDE 長瀬麻奈」1/7スケールフィギュアが本日9月25日(土)から予約販売開始! | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com - ファミ通.com 『MITO BLUE PRIDE 2021』開催のお知らせ - スポーツナビ - スポーツナビ 素手ボクシングで“PRIDE王者コールマン愛弟子”バーンズ、またも失神KO劇!「完璧な練習が完璧なKOを作る」と称賛の声(イーファイト) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース PRIDE | ASKA - ORICON NEWS 「結婚の平等 / 同性婚」を実現するために企業にできることとは何か。LGBTQと職場環境を考える「work with Pride」の10周年企画の第二弾オンライン・イベントを、9月13日(月)に開催! - PR TIMES 「IDOLY PRIDE」のキャスト10名が“TOKYO IDOL FESTIVAL 2021”に10月3日出演決定 - 4Gamer.net TVアニメ『プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~』10月6日(水)よりABEMA、TOKYO MXほか各局にて放送開始! - PR TIMES IDOLY PRIDE、初アルバムを2タイトル連続リリース プロジェクトの楽曲をコンプリートした内容に - リアルサウンド サニピがテレビでライブ! 『アイドリープライド』サニーピースが9月6日(月)『おはスタ』に出演! - 電撃オンライン PRIDE・UFCで活躍した“筋肉三兄弟”フィル・バローニが現役引退、大晦日に桜井マッハ速人と激闘も - イーファイト 滝澤諒 公式ブログ - Battle of Pride - Powered by LINE - lineblog.me LGBTQと職場を考えるカンファレンス「work with Pride」の10周年特別企画「これまでの10年、これからの10年」、8月26日(木)19時からオンライン開催! - PR TIMES 【公演レポート】全員が主役です!ヒプステ初のライブ公演「Battle of Pride」大阪でスタート(コメントあり) - ステージナタリー 「IDOLY PRIDE」,夏の特別賞与として3000ダイヤをプレゼント。Twitterキャンペーンも開催中 - 4Gamer.net 「Gunosy Way」から「Gunosy Pride」へミッションを達成するため、全員で共有する価値観と行動指針をアップデート - PR TIMES スカーゲンから、2021年プライド コレクションの新作を発表。デンマーク コペンハーゲン「WORLD PRIDE」祭典にエールを送る限定コレクション - PR TIMES 元PRIDE王者ヒョードルが10・23母国でティム・ジョンソンと対戦 - ニッカンスポーツ QualiArts、『IDOLY PRIDE』でアイドル育成ミッション開催 ミッション達成で白石沙季の水着衣装や育成に役立つアイテムがもらえる | gamebiz - SocialGameInfo モバイルゲームの域を超えた画づくりでアイドルたちを輝かせる! 『IDOLY PRIDE』 | 特集 | CGWORLD.jp - CGWORLD.jp 21年間リングコール務めるレニー・ハートさん 代名詞“巻き舌コール”が生まれた理由(ENCOUNT) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 職場でのLGBTQに関する取組み評価指標『PRIDE指標2021』、7月1日から応募受付開始。同性婚法制化や平等法整備の支持、コレクティブ・インパクト型の取組を評価する「レインボー」認定を新設 - PR TIMES ヒプステ「Battle of Pride」総勢28人のビジュアルが公開 世古口凌からメッセージも - 2.5ジゲン!! May n 、TVアニメ『プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~』エンディング主題歌を担当 - OKMusic 元PRIDE王者ヒョードルが10・23ベラトール大会参戦発表 - ニッカンスポーツ 【アイプラ】漫画版の情報まとめ【アイドリープライド】 - AppMedia(アップメディア) ラルフ ローレンがプライド月間を祝うコレクションを発表! 収益金を財団に寄付。 - VOGUE JAPAN 戸松 遥さんが求めるのは“ウェットティッシュ”? 「IDOLY PRIDE」LizNoirのキャスト陣にメールインタビュー - 4Gamer.net 「プライドは世界のみんなが感じるべきこと」──絵本『いろいろ いろんな かぞくの ほん』。【VOGUEプライド文庫|西村宏堂】 - VOGUE JAPAN 汗と涙のリアルな表現こそが『IDOLY PRIDE』の真骨頂!ーアイドルは感情爆発の先で何を視る - インサイド エルトン・ジョン、YouTube Pride 2021の共同ホストに決定。 - VOGUE JAPAN 【先行プレイ】隙間時間で楽しくプレイ&ハイクオリティな3Dでアイドルたちを愛でよう『IDOLY PRIDE(アイドリープライド)』アプリ版をレビュー | スマホゲーム情報ならファミ通App - ファミ通App アニメ「IDOLY PRIDE」7月5日から平日夕方にテレ東で再放送 - ナタリー 世界規模の多様なセクシュアリティ啓蒙月間LGBTQ+「Pride Month(プライド月間)」 SORANO HOTELは身近に感じていただくきっかけに、季節のかき氷「Pride Ice」で応援します - PR TIMES 自分らしく生きるための「6ステップ」とは?6月は「プライド月間」です - tenki.jp LGBT+ Pride 2021 グローバル調査、性自認と性的指向について世代間のずれを指摘 - Ipsos in Japan マイクロソフト、Pride にてインターセクショナリティに注目 LGBTQI+ 非営利団体への寄付と、最大かつ最も包括的なオリジナル製品を発表 - News Center Japan - Microsoft News 【RIZIN】PRIDE東京ドームで激闘の小路晃、18年ぶり東京ドーム大会に期待「選手たちの熱い生き様こそ元気与える」=五輪聖火リレーにて - イーファイト バレンシアガ、プライド月間を祝したカプセルコレクションを発売。 - VOGUE JAPAN いくつ知ってる? LGBTQコミュニティを象徴するフラッグとその意味 - ハーパーズ バザー・オンライン SHIBUYA PRIDE MONTHの開催が決定。「Disney」「PIXAR」「MARVEL」「STAR WARS」のレインボーカラー商品が登場!|ショッピング|ディズニー公式 - Disney公式 「LGBTQの人たちの功績を称えよう」バイデン大統領がプライド月間初日に呼びかける - ハフポスト日本版 楽天、「プライド月間」に合わせLGBTQ+への理解促すオンラインパレードを実施 - AdverTimes(アドタイ) 日本の介護の力を拡張・強化する!KAiGO PRiDEプロジェクトが一般社団法人として本格稼働 - PR TIMES 楽天、プライド月間にLGBTQ+への理解促進に向けた活動「Walk Together with Pride」を実施 - PR TIMES 「PRIDE ON WITH KIEHL’S」~キールズと一緒に、ありのままの自分を楽しもう!~ - PR TIMES 『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -Battle of Pride-がW表紙!『ステージグランプリ vol.14』は6月28日(月)発売! - PR TIMES 「The Walt Disney Company s Pride collection」第2弾が登場!ピクサーやマーベル、スター・ウォーズのレインボーカラーアイテムも<ディズニーストア>|ディズニーストア|ディズニー公式 - Disney公式 Converse がレインボーカラーのグラフィックを配した Pride コレクションを発表 - HYPEBEAST TVアニメ「IDOLY PRIDE -アイドリープライド-」新たな衝撃を生んだアイドルアニメの魅力をライター・平賀哲雄が紐解く - コミックナタリー 特集・インタビュー - コミックナタリー Vans が LGBTQ+ プライド月間に向けて “Pride Month 2021” コレクションを発売 - HYPEBEAST ニューバランスが2021年のPRIDEにおけるシグネチャープログラムとコレクション“EVERYBODY’S WELCOME”を発表 - PR TIMES 2日間で約160万人が視聴「東京レインボープライド」をレポート - Time Out Tokyo 『鳥の詩』『CORE PRIDE』が『ガルパ』に実装決定 - 電撃オンライン Gapから2021 PRIDEコレクションが発売 - PR TIMES 『IDOLY PRIDE』の事前登録者数が30万人を突破!“純金製の名刺”が抽選で10人に当たるTwitterキャンペーン実施中 | スマホゲーム情報ならファミ通App - ファミ通App 「プロ野球PRIDE」で,9周年を記念した9つのキャンペーンが開催 - 4Gamer.net 新コレクション「The Walt Disney Company’s Pride collection」登場 - PR TIMES 「プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~」で主役に抜擢された新人声優・増田里紅さんによるレギュラー生配信番組が「OPENREC.tv」にて開設決定! - PR TIMES 女子アイスホッケーをテーマにしたメディアミックスプロジェクト「プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~」キービジュアル第二弾を解禁! - PR TIMES 『IDOLY PRIDE』最終回直後・キャスト4人インタビュー「物語はこれから始まっていきます」 - WebNewtype 神田沙也加、TrySailら歌い上げる『IDOLY PRIDE』 清竜人、kzなどクリエイター陣に注目 - リアルサウンド 冬アニメ『IDOLY PRIDE -アイドリープライド-』第9話のあらすじ&先行場面カットが公開! - アニメイトタイムズ 開催中の『IDOLY PRIDE ポップアップストア』にて「大きめアクリルスタンド」「ブランケット」など新作グッズの発売が決定! - PR TIMES 冬アニメ『IDOLY PRIDE -アイドリープライド-』キービジュアル第3弾解禁! 新グループ「サニーピース」と「月のテンペスト」のグループビジュアルも公開 - アニメイトタイムズ 「IDOLY PRIDE」CD4作品のジャケット&収録内容公開 - ナタリー 大型アイドルプロジェクト「IDOLY PRIDE」がスマホゲーム化。今春の配信に先駆けて事前登録の受付がスタート - 4Gamer.net LGBTQへの取組指標「PRIDE指標2020」において、シルバー認定を獲得いたしました - waseda.jp
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1090.html
先を急ぐせつなと、慌てて追いかける祈里。二人はかけ足で目的のマンションへと向う。 そんなに急ぐ必要はないはずだった。強いて言えば直感。言葉にできない胸騒ぎがせつなを駆り立てる。 不意に、せつなの表情が変わる。突然足を止めて、集中するように耳を澄ます。 「どうしたの? せつなちゃん」 「悲鳴が聞こえたわ。ごめんなさい、私は一足先に行くわね」 「えっ? 待って!」 せつなは一言だけ告げると、弾けるような加速で走り出した。 先程とはまるで違う、スプリンターのような全力疾走だ。たちまち引き離されて、姿が小さくなっていく。 祈里には何も聞こえなかったが、せつながそう言うのだから、何かが起きたのは間違いない。 誰の悲鳴かもわからないが、目的地が変わってしまったのだ。とにかく見失わないように、祈里も急いで後を追うことにした。 『クリスマスに愛を込めて(後編)』 せつなが駆けつけたのは、事故から数分後のことだった。近くにいた数人の大人が、少女を歩道に連れ戻し、倒れた犬も運んでくれていた。 せつなは少女が自分の知り合いであることを告げ、後のことを引き受けた。 少女に怪我がないことを確認して、犬の容態を見る。診ることはできない。そんな能力はせつなにはなかった。 身体は温かいが、意識はない。素人目にも、かなりの重態であるように思えた。 「ルルがっ、ルルが死んじゃう! わたしのせいなの! わたしが……」 「落ち着いて、もうすぐ動物の怪我に詳しい人が来るから」 「もう着てるよ、わたしが診てみる」 荒い息を吐きながら、祈里が犬の前で膝を付く。 道路に付いた血の跡と、せつなと少女の様子から、何が起きたのかは想像が付いた。 「祈里お姉ちゃんって、お医者様なの?」 「その勉強をしているところよ。大丈夫、任せて」 どこに隠し持っていたのか、祈里は携帯用の消毒液を噴射して、包帯を手際よく巻いていく。 傷口を覆うというよりも、その周囲をキツく縛るような巻き方だった。 「お姉ちゃん、怪我してるところはそこじゃないよ?」 「ここでいいのよ。まずは出血を止めなきゃ」 「そうなの! こんなにいっぱい血が出てる。どうしよう……」 「それは良いことでもあるの。動物に限らず、生き物はね、生きている間しか血は出ないのよ」 つまり、出血している間は助かる可能性がある。安心させることはできないけど、まだ希望はあると伝えた。 「死なないで、ルル。お姉ちゃん、ルルは助かるの?」 「それはわからないけど……。全力を尽くしてみる」 「きっと、助かるわ」 「えっ、ホント?」 「せつなちゃん、どうして?」 「私たちが、死なせないからよ」 せつなは止血を終えたばかりのルルを、しっかりと抱き上げた。 「家に連れて帰りましょう」 「でも、お医者さんに見せないと!」 「今、私の家に、この世界で一番の名医がいるのよ」 「それは言いすぎだと思うけど、腕は確かよ。でも、それならわたしの家に。手術室が必要になるから」 「わかったわ!」 祈里が携帯で正と尚子に連絡を入れる。自分はせつなと一足先に自宅に戻って、オペの準備をするつもりだった。 少女は走りながら、二人のお姉さんたちを不思議そうに見上げる。 十キロを超える体重のルルを、軽々と抱き上げて走るせつな。一目見ただけで容態を見抜き、応急手当までした祈里。 たった三つか四つ、年上なだけのお姉さんたちなのに、なんて頼もしいのだろう……。ただ泣き喚くだけの自分と、どれだけ違うのだろうと。 祈里とせつなと少女は、山吹動物病院の正面入り口を開けて、そのまま手術室に飛び込んだ。 せつなが手術台にルルを降ろし、そこで彼女の役目は終わりだ。 後は祈里の仕事。二人に少し離れているように指示して、自分は暖房を入れてお湯を沸かす。 ピンク色の手術着に着替えて、器具を殺菌消毒する。そこで、正と尚子が到着した。既に、青色とピンク色の手術着に着替えている。 「祈里、よく頑張った。後は任せなさい」 「ううん、わたしも手伝う」 「わかったわ、よく見ていなさいね」 「あのっ! お医者様、どうか、ルルを助けてください」 「ルルちゃんは、今、精一杯頑張っている。私もこれから頑張る。君は、君にできることをやりなさい」 「わたしに、できることありますか?」 「きっと助かるって、信じてあげること。そして、回復を願って祈ることよ」 「おじさま、おばさま、よろしくお願いします」 せつなは、少女の背中を押すように手術室を後にした。 素人の彼女にも、これからの処置に大変な集中力が必要であることを感じ取れたからだ。 正と尚子と祈里は、もう脇目も振らずに手術に専念していた。 正が、麻酔機を使用して全身麻酔をかける。尚子が口から酸素管を挿入、血管に麻酔管を固定する。続いて、メスを入れる箇所の消毒。祈里が滅菌布の上に器具を並べていく。 有窓布をルルにかけて手術を開始する。同時に、心拍、呼吸数、血圧、血中酸素濃度をモニターに繋いで管理する。 タオル鉗子で固定してメスを入れる。その動きは、美しいほどに正確で、そして、速かった。 少女はせつなに手を引かれて、心配そうに、何度も手術室を振り返りながら待合室に向う。 そこには、たくさんの人の姿があった。 ラブと、その両親の、圭太郎とあゆみ。美希と、その母親のレミ。みんな心配して、パーティーを投げ出して来てくれたのだった。 せつなは、そこに居るみんなに経緯と状況を説明していく。 「ルル、大丈夫だよね? 助かるよね?」 少女は落ち着かない様子で、何度も同じことをせつなに尋ねる。ラブも美希も一緒なのだが、現場に居合わせたのはせつなだけだ。 同じ衝撃と悲しみを共有する者として、どうしても、せつなにべったりと甘えてしまう。 始めは頷いたり、微笑みかけたリするだけだったせつなが、やがて口を開く。 「正おじさまと、尚子おばさまが言ったこと、覚えてる?」 「信じて、祈りなさいって。でも、それって、わたしには何もできないってことよね?」 「違うわ! 信じることと祈ることは、そんな意味じゃないの」 「ちがう……意味って?」 「かつて私は、ラブの信じる心で救われた。そして、みんなの祈りは世界を救ったのよ」 「どういうこと? わからないよ、お姉ちゃん」 「信じて、祈ることは、相手を想い、応援することよ。それは本当の力になるわ。それに――――」 「それに?」 「クリスマスってね、特別な日なんですって。神様が見ているらしいの」 「それ……お母さんにも言われたことあるわ。お姉ちゃんは、神様を信じているの?」 「信じたいと、思っているわ」 「わたしも……もう一度信じたい。それでルルが助かるのなら!」 少女は目を閉じて手を合わせる。ルルの傷付いた姿を思い浮かべ、次に元気になった姿を思い描く。 クリスマスには、奇跡が起こるって信じたい。神様は、本当に見ているって信じたい。良い子にしていたら、神様の使いである―――― サンタクロースが、欲しいものを届けてくれるって信じたい。 少女が、今、一番欲しいもの。 それは――――元気になったルルなのだから。 しばらくして、少女は目を開く。 最初に目に飛び込んだのは、同じように目を閉じて祈る、せつなの姿だった。 そして、振り返って目を見開く。 ラブ、美希、圭太郎、あゆみ、レミまでもが、全員目を閉じて、深い祈りを捧げていた。 衝撃を覚える。自分は何を見ていたのだろうと。 ルルの怪我のことで頭がいっぱいで、見舞いに駆けつけてくれたみんなに、お礼すら満足に言ってなかった。 自己紹介だってせつなに任せっきりで、軽く頭を下げただけだった。 初めて顔を合わせる大人も三人いる。自分と知り合わなければ、今頃楽しくパーティーをしていたはずの人たちが、ここに六人も居るのだ。 嬉しくて、申し訳なくて、胸がいっぱいになる。 祈りを終えたみんなに、涙を浮かべながら、一人一人お礼を言った。 「来てくれて、ありがとう。大切なパーティーを台無しにしちゃって、ごめんなさい」 「大丈夫だよ。そんなの、いつでもやれるじゃない」 「みんなで、笑顔になれるパーティーでなきゃね」 「ちゃんと、ルルちゃんのプレゼントも用意してあるのよ」 「あ~あ、アタシももう少し若かったら、プレゼントもらえるのにな~」 「ママは、若返っても良い子じゃないから、やっぱりもらえないんじゃない?」 「美希ちゃんひどい! そんなこと言う子こそ、悪い子なんだから」 「くすっ、クスクス。お姉ちゃんたち、ありがとう」 少女が始めて笑顔を見せる。その時、一つ目の奇跡が起きた。 部屋の窓から、白い粒がいくつか見えた。 窓を開けて見上げる。始めは、錯覚かと思うほど少なくて。 やがて、はっきりとした姿で夜空を彩っていく。 寒い日にだけ咲くという、氷で創られた天上の花。 とても小さくて、どこまでも繊細で、ただ一つとして同じ形のない、 それは――――神様からの贈り物。 「すごいね。ホワイトクリスマスなんて、いったい何年ぶりだろう?」 「綺麗……。ルルと出会った、クリスマスイブの夜以来よ」 そして起こる、二つ目の奇跡。 正と尚子と祈里が手術室から出てくる。 「お医者様! ルルはっ? ルルはどうなりました?」 「もう心配いらないよ。今は麻酔で眠っているが、しばらくしたら目が覚めるだろう」 「また、走れるくらいにまで回復すると思うけど、一週間は入院が必要ね」 「良かったね」 「うん! ありがとう!!」 手を触れなければ、近くで見ても平気らしい。少女は手術室で眠るルルの様子を伺う。 先程のように倒れているのではなくて、規則正しい呼吸で静かに眠っている。そんな、安らいだ表情に見えた。 少女は、改めて正と尚子にお礼を言う。この人たちもまた、祈里の両親。何もなければ、今頃パーティーを楽しんでいたはずだった。 「私のせいで、せっかくのクリスマスを、パーティーを台無しにしちゃって、ごめんなさい」 「なんの。ルルの命が救えて、君の笑顔も見られたんだ。これ以上素敵なクリスマスなんてないじゃないか」 正は、そう言って優しく微笑む。 初めて、まじまじと正の顔を見つめた少女が、不思議そうな顔で一言つぶやいた。 「サンタクロース……」 近くで見ていて、ようやく聞こえるか聞こえないかの、小さなつぶやきを聞き取った祈里とせつなが吹き出した。 正はサンタクロースに似ている。それは、クリスマスが近づくと必ずネタにされる笑い話だったからだ。 その笑いの意味に気が付いて、みんな一斉に吹き出した。尚子もレミも、あゆみや圭太郎まで。 楽しげな笑い声は、幸せな日常が戻ったことを告げているようで―――― 一人だけ笑わなかった少女が、もう一度つぶやいた。 「やっぱり居たんだ。ありがとう、サンタクロースの――――みんな」 ルルは正と尚子が交代で診るからと、一同は桃園家に戻ってパーティーのやり直しをすることになった。 もちろん、少女も一緒に。 その夜は、少女にとって、ルルと出会った晩と同じくらいに、忘れられない大切なクリスマスになった。 「それじゃ、ルルのことお願いします。学校終わってから、毎日寄りますから」 「ちゃんと勉強するのよ?」 「この子は、家まで僕とあゆみとラブとせっちゃんで送っていきます」 「おやすみなさい、みなさん。今日はありがとうございました。メリークリスマス!」 『メリークリスマス!』 家に帰ると、母親が玄関まで迎えに来てくれた。送ってくれた桃園家の人たちに、丁寧にお礼を言って別れる。 少女が用意しておいた夕ご飯は、既に食べ終えていた。 代わりに、クリスマスケーキとシャンパンがテーブルに乗っている。 「お母さん、遅くなってごめんなさい。待っててくれたの?」 「帰ったばかりだし、連絡もあったから平気よ。ケーキを買ってきたの、一口くらいはまだ入るわよね?」 「うんっ!!」 母親は、クリスマスプレゼントを娘に手渡す。早くからサンタクロースの夢を壊して、ごめんなさいと謝った。 「ううん。わたし、わかったの。ちゃんとサンタさんはいるんだって」 「どういうこと?」 「お母さんの中にも、みんなの中にも。わたしや、ルルの中にだってね」 「そうね。サンタクロースは、相手の幸せを願う心の中に居るのかもね」 「心の中にも、よ。お空にだって、きっといると思うの。でも、これからは、わたしがお母さんのサンタさんになってあげる」 そして、少女は用意していた包みを母親に手渡す。貯めていたお小遣いで買った、いくつかの毛糸。見よう見まねで編んだ、へたくそなマフラーだった。 母親は、そのマフラーを握りしめて小刻みに震えだした。そして、娘を強く抱きしめる。 「メリークリスマス、お母さん」 「メリークリスマス、私の小さなサンタさん」 命はみんな繋がっていて。愛することによって、繋がっていって……。 誰もが、誰かのサンタクロース。 世界中に溢れる愛を見守るように、雪はその夜が開けるまで静かに降り続けた。 翌朝の景色を、銀世界に変えるために。 それは、天上からの贈り物。 メリークリスマス。 ~~ fin ~~
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1022.html
***プロローグ*** もしもお伽話の人魚姫が実在するとしたなら―――それはきっと彼女のような人なのだろう。 身近な人間の贔屓目だって人には笑われるかもしれないけど、彼女の泳ぎを見る度にそう思う。 優雅で、美しくて、彼女の起こした水しぶきまでもが真珠のように輝いて見えて。 幼い頃、その姿に心を奪われて……それからだろうか、自分が彼女を意識するようになったのは。 勿論、泳いでる姿だけが魅力的なのじゃない。 普段は頼り甲斐があって、優しくて、クールぶってる癖にちょっと抜けてて―――そんな彼女の内面も含めて…多分…自分にとっては初めての……というか現在進行形で、その……恋してる、誰よりも大切な人で……。 子供の時から、漠然とであったけれど、きっといつまでだって二人で一緒にいるのだろうな、って考えていた。人魚姫と王子様は結ばれなかったけど、自分と彼女は決して離れることはないんだろうなって。 けれど、恋は盲目とはいうものの、不満がないわけではなくて………むしろ恋をしているからこそ、不満に思うところもある。 この胸に芽生えてしまった不満……それは―――……。 ***美希SIDE*** ギラギラと照りつく夏の太陽が眩しい海辺。 砂浜は大勢の家族連れや水着姿の恋人達で賑わっていた。 「ちょ、ちょっと待って下さーい!え、えりかー!!」 「あははは、こっちこっちー!早くおいでよ、つぼみー!」 ……あのコ達も恋人同士……なのかしら。遠目でよく分からないけど、前にどこかで会ったような……。 「ふふっ……いいな。楽しそうよね、あのコ達」 あたしの隣でブッキーが少し羨ましそうに言う。 久しぶりに海に来る、って事で彼女らしくないちょっと大胆な黄色のビキニを着ているのが目に眩しい。 それ選ぶのにあたしも付き合ったのよね……あたしの着てるのもその時ブッキーが選んでくれた物だし……。 だけど、そのあたしの水着はというと……。 「……ゴメンね、ブッキー……あたしがアレ忘れちゃったばっかりに……」 暑いというのに手首まで隠れる大きめのパーカーの下に隠されていた。 それだけじゃない。 頭にはつばの広い帽子を被り、目には大き目のサングラス。口元も隠すようにタオルを巻いて。 とても海にやって来た、という格好とは思えない。 「あ、う、ううん!気にしないで、美希ちゃん!別にそういうつもりで言ったんじゃないから!」 慌てたように首を横に振るブッキー。 彼女が今日という日をどれほど楽しみにしていたか知っているあたしは(そりゃ勿論あたしだって楽しみにしてたのよ!?)、申し訳なくて溜息を漏らすばかり。 日差しを避ける為のビーチパラソルの下、あたしは恨めしげに砂浜を楽しげに駆ける少女達を眺めていた。 「―――姉さん、山吹さん、お待たせ」 両手に冷えた缶ジュースを何本か抱えた和希があたし達の元へと戻ってきた。 「あ、ありがとう、和くん」 差し出されたジュースを受け取るブッキー。だけどあたしは……。 「ありがとう、和希。だけどジュースよりもその――――」 あたしの切羽詰った声に、和希は言いにくそうに視線を逸らす。 「ごめん、姉さん……随分探したんだけど、どこも売切れだったよ……」 「あ……そ、そう……し、仕方ないわね……」 「確か来る時にコンビニがあったから、この後そこまで行ってみるよ」 和希はプルトップを開け、余程喉が渇いていたのか缶の中身を一気に飲み干す。 「そ、そこまでしなくてもいいわよ!悪いのはあたしなんだし……」 「いいから姉さん達はここで待ってて。それじゃ」 「あ!和希!ちゃんと帽子かぶって行くのよ!日射病にならないように……あと何かあったらすぐに連絡する事!」 「心配性なんだから……今日はいつもより体調もいいんだ。大丈夫だよ」 白い歯を見せて笑うと、和希はまた人波へと姿を消した。その後姿を見送りながら、あたしはまた申し訳なさから大きく溜息をつく。 なんで…なんでよりに寄ってアレを忘れてきちゃうのよ……あたしったら……絶対にバッグに入れたと思ったのに……。 あたしの落ち込んだ様子に、ブッキーが心配そうに声をかけてくる。 「美希ちゃん……大丈夫よ。元気出して。きっとどこかに売ってるはずだから―――日焼け止め」 ***祈里SIDE*** 元々、今回の海への旅行の発案者は美希ちゃんだった。 最近弟の和希くんの体の調子も良く、お医者さんからは「少し日光に当たって身体を動かすのもいいかもしれません」と言われた事がきっかけで。 「それでね…海にでも連れて行ってあげようと思うんだけど……も、もしブッキーも……その……」 頬を染めて伏し目がちにわたしを誘う美希ちゃん。 消え入りそうなその言葉に、わたしは内心ヤキモキしながら、助け舟を出す。 「―――いいわね!わたしも一緒に行きたいな。だめ?」 「ほ、ホント!?よ、良かった。じゃあ―――」 わたしとしては彼女のこういうところが……不満。 普段はビシッとしてて格好いいのに、わたしに対してだけはいつも弱気。 告白したのだってわたしからだし、照れてるからか、彼女の口からまともに愛の言葉なんか聞いた事もなくて。 もっと強気にリードしてくれたっていいのにな……。 一度でいいから……その……彼女の口から想いを告白して欲しいのに。 わたし達だけで旅行なんてって普通ならお母さんが反対するだろうけど、男の子の和くんがいる事で今回はスムーズに許可が出た。 レミさんは最後まで自分も一緒に行きたいってごねてて、「普段はあたしを置いて旅行ばっかりしてるのに」って、美希ちゃんは愚痴をこぼしてたけど。 二人きりじゃないからその……ラブちゃん達みたいにいちゃいちゃしたり出来ないのは残念だけど(ごめんね和くん)、夜は二人部屋だし……ちょっぴり邪な期待も……。 ま、まあそれはともかくとして! 折角の海への旅行、という事でわたし達ははしゃぎまくった。二人でお互いの水着を選びに行ったり、ドーナツカフェで綿密に計画を練ったり。 美希ちゃんは「せっかくの旅行なんだから完璧!にしないとね!」って凄く張り切ってた。 ―――ところが、いざ海に到着した時、彼女は重大な忘れ物をしてきた事に気がついたのだ。それは―――「日焼け止め」 「何だ、そんなことくらい」って思われるかもしれないけど、モデルさんのお仕事をやっている美希ちゃんにとってはそれはまさに死活問題。 夏真っ盛りとはいえ、雑誌では早くも秋物特集を組み始めている時期で、事に寄っては冬物の企画だってすでに動き始めてる。 美希ちゃんも夏休み中に何回か撮影を控えてるみたいで、そのどれもが秋から冬にかけてのフッションばかり。真っ黒に日焼けした健康的な―――なんてイメージは決してそぐわない物ばかりだ。 故に―――絶対に日に焼けてなどならない。 「美希ちゃん、足にもタオル掛けておかないと……焼けちゃうわ」 相変わらず落ち込んで無言の美希ちゃんの足に、そっとタオルを被せる。 「―――ブッキー……あたしの事はいいから、和希が戻ったら泳いできたら?海まで来たんだし……」 「え…?う、ううん。わたしはいいの。美希ちゃんの傍にいたいし……」 「ゴメンね……あたしのドジにつき合わせちゃって……」 今日何度目になるか分からない美希ちゃんの謝罪の言葉。けどその言葉をこれ以上聞くのは、ちょっと辛い。 わたしは返事をしないで、海へと目を向けた。仲睦まじげに泳ぐ先ほどの女の子達が見える。 「ホラホラ~!早く来ないとブラ返さないよ~!」 「ひ、ヒドいです、えりがぼがぼっ!!堪忍袋の緒がぼがぼっ!!」 ……仲睦まじくはないのかしら……。 どうやら泳いでるうちに片方の女の子の水着が流されちゃったみたいね。片手で胸押さえてるし、溺れないか心配だわ。 でも……。 「…本当に楽しそう……」 「えっ!?あれのどこが!?」 「あ、そ、そうなんだけど!……でも、ああいう事でも、きっと後で思い返してみたらいい思い出になるんじゃないかなって」 言ってしまってからあっ!と後悔して口を押さえる。わたしの不用意な言葉が更に美希ちゃんを傷つけてしまったみたい。 膝を抱えてそこに顔を埋めると、彼女は小さな声で呟いた。 「……あたしさえしっかりしてれば……」 「美希ちゃん……」 わたしは彼女の傍に寄り添い、その肩に頭を預け、目を閉じた。 「落ち込む事なんてないの……わたしは美希ちゃんとこうしてるだけで幸せなんだから……」 「ブッキー……」 「ね、言ってみて。わたしは美希ちゃんの――――何?」 ちょっぴり甘えた声で、美希ちゃんに問い掛ける。 ―――ね、美希ちゃん。言ってみて。その言葉だけでわたしはどんな事でも許してあげるから。 「ななな何って―――そそそれは……その……」 言葉に詰まり、恥かしそうに顔を赤くしてそっぽを向いてしまう美希ちゃん。―――もう……わたしの意図は伝わってるくせに……。 もどかしくなったわたしは、突き詰めるかのように更に言葉を重ねる。 「―――何?」 言いにくそうにしていた彼女も、意を決したかのように一度大きく深呼吸して、わたしの方を向き直った。 「も、勿論あたしの何より大事なこ―――――」 「―――ねえねえ、彼女たち。どこから来たの?」 「可愛いねー。中学生?にしてはそっちのパーカーの彼女は大人びてるなあ」 わたしの一番聞きたかった言葉は、突然の闖入者の声にかき消された。 顔を上げたわたし達の前には、髪の毛を染め、良く日に焼けたいかにも軽薄そうな大学生くらいの男の子が二人立っている。 「ね、良かったらサ、一緒に遊ばない?」 「折角の海なんだしさー、ヒトナツの思い出っての作ってってもいいんじゃない?」 ……もうちょっとだったのに……。 美希ちゃんはウンザリした様子だったけど、一瞬で笑顔を作って(さすがモデルさんだわ!)彼らに向けて手をひらひらと振る。 「ゴメンなさい。あたし達そういうの間に合ってますからー」 「えー、そんなつれない事言わないでさあ~。俺らも男二人で退屈してたんだ」 「俺達マジメだよ~?下心なんて全然ナシ!ちょっと遊ぶだけだからさ、ね?」 男の子達もナンパし慣れてるのか、しつこく食い下がってくる。 いつもならこういう時には和希くんが美希ちゃんの彼氏役になってくれるんだけど、コンビニまでは距離があるし、まだ戻ってくる気配はない。 ―――もう…こうなったら……。 「あの……わたし達は別に女の子二人で退屈してませんから!」 「「「え!?」」」 突然のわたしの発言に、男の子達同様に美希ちゃんも驚いたみたい。やだ……邪魔されたからってわたし……らしくなかったかしら……。 だけど一旦口を開いた以上は黙ってもいられない。 「ね?言ってあげて。だって美希ちゃんはわたしの―――――」 続きを促すように美希ちゃんののサングラスの奥を見つめる。 「わたしの……何?」 「え?まさか女の子同士で、とかないよね?」 男の子達の視線もわたしにつられたかのように美希ちゃんへと集中した。それがますます彼女を狼狽させる。 「あ、あたしはそ、その……な、なんと言うか……」 絡みつく視線を断ち切るように、美希ちゃんは思い切り大きな声で―――――。 「彼女の……こ、こ――――お、幼馴染なのよ!!!」 ……し―――――――――――ん。 ――――空気が凍りつく、ってきっとこういう事を言うんだわ………。 波が引くように一瞬の間を開けてから、男の子達はまた口を開きだした。 「そ、そうなんだ。俺達もさ、小学校の時からの知り合いで……なあ?!」 「あ、そうそう。だからさ、お似合いじゃない?ね?」 戸惑う男の子達の反応をスルーして、美希ちゃんはわたしの方をちらりと盗み見る。 欲しかった答えが得られなかったわたしは……まるでフグみたいにぷううっと頬を膨らませて……。 もう!!こんな時くらいはっきり言ってくれてもいいじゃない!! わたしの反応に慌てたのか、オロオロしながら美希ちゃんは弁解しようと言葉を繋いだ。 「あ、あのね、ブッキー、い、今のはそのなんというか……な、成り行き―――――」 「あなた達!待ちなさい!!」 けど、取り繕おうとする美希ちゃんの声は、再び新たな闖入者に寄ってかき消されたのだった。 ***美希SIDE*** 「嫌がってる女性を無理に誘うなんて、みっともないと思わないんですか!」 突然の新たな乱入者の登場に唖然とするあたし達と男の子二人組。 声の主はひょろりとした体躯を強く見せようとでもしてるのか、胸を大きく反らし、腕組みをして仁王立ちしている。 ―――でも正直迫力不足も甚だしいわ。下手したらこのナンパな男の子達の半分も体重がないんじゃないかしら。 えーと…見覚えのある眼鏡とらっきょ……もとい、特徴的なこのヘアースタイルは……ラブと同じ学校の―――なんて言ったかしら? 「け、健人くん!」 ああそうそう、御子柴健人くん。 前に皆で遊園地行ったりトレーニング施設を貸してもらったりしたのよね。―――ブッキーを船上パーティに招待したりした事も……く、嫌な思い出だわ。 それにしたってなんでこのコがここにいるのよ? 「あ?なんだお前?」 「あのさ、俺ら今忙しいんだよ。ヒーローごっこならそこらの子供とでもやってくんね?」 御子柴君の登場に一瞬怯んだものの、自分たちより明らかに格下の相手だと考えたのか、男の子達は居丈高に御子柴君へと詰め寄った。 でも、意外と言うか、御子柴君には焦った様子も怖気づいた様子も感じられない。 「ふふん。あなた達、それくらいにしておいた方がいいんじゃないですか?」 「ああ?何言って―――――」 「お、おい!ま、周り見ろよ、周り!!」 一人の男の子の言葉に、連れの子だけじゃなく、あたしたちまで周囲を見回す。 げ…な、なによこれ………。 いつの間にかあたし達のいるビーチパラソルの周りは、体格のいい何十人という黒スーツ、サングラスの男性達に包囲されていた。み、見てるだけで暑苦しいわ……。 見ているあたしとは反対に、余程訓練されているのだろうか、彼らは汗一つかかず、後ろ手に手を組んだまま、直立不動の体制で身動き一つしない。 「な…なんだよこいつら……」 男の子達も彼らの異様な風体に気圧されたのか、背中合わせになって怯えている。 「彼らは我が御子柴財閥の誇る有能なSP達ですよ……もし僕に何かしようものなら―――――」 言って御子柴君はパチン、と指を鳴らした。途端にザザッ、とファイティングポーズを取る黒服の男達。 素人目にも格闘の達人と分かる彼らの威圧感と殺気に、男の子達は「ひっ」と小さく呻くと、くるりとあたし達に背を向け、 「あ、お、俺達用事思い出しちゃったから……」 「じゃ、じゃあまたね!彼女達!!」 と言い残すと、凄いスピードで砂浜の遥か彼方まで一気に走り去ってしまった。 「ふ、口ほどにもない。大丈夫ですか、山吹さん?」 余裕の表情で手をパンパンと払う御子柴君。いや、あなた何もしてないじゃないの! 「あ、ありがとう健人くん……とSPさん達……」 「ま、まあ助かったわ…ありがとう」 「いや、お礼には及びません。実はこの海沿いに御子柴財閥がリゾート施設を建設する事になってましてね。その為に視察に来ていただけですし。―――でも良かった」 ス、とブッキ―の手をさり気なく握る御子柴君。ちょ、ちょっと何やってるのよ!ブッキー、早く振りほどいて! あたしの心の声が届かないのか、この雰囲気に流されてしまってるのか、彼女は手を取られるがままに御子柴君へと聞き返す。 「良かった……って?」 「あなたを守る事が出来たからですよ、山吹さん」 「僕の大好きな、大切な人を守る事が出来た」 その台詞に一瞬あたしの顔から血の気が引き、その後一気にカーッっと頭のてっぺんまで熱くなった。 (は、はあ!?な、何歯の浮くような事言ってるのよ!?それはあたしの台詞よ!!) けど、あまりの怒りの為か、あたしの口からは何も言葉が発せられない。 (ちょっとブッキーからも言ってあげ――――) 拒否の言葉を口にしないブッキーがもどかしくなり、彼女の横顔に合図するように強い視線を送る。でもあたしが見たのは嫌がってる様子のブッキーじゃなく。 「…………」 ―――予想に反して御子柴君の言葉に頬を赤らめ、うっとりとした目をしているブッキー……だった。 その言葉に微笑んだ御子柴君がゆっくりと手を上げると、途端に周囲の黒服軍団からパチパチパチ……という祝福の拍手が起こり始める。 どれだけ訓練されてるのよ!!!というツッコミも入れる事が出来ないまま、あたしはただ呆然とブッキーを見つめ続けた。 ***** 「姉さん、お待たせ。やっぱり日焼け止めはその―――姉さん?」 あー……誰かあたしに話しかけてるわ。誰かしら。聞き覚えのあるような声だけど……。 「姉さん?姉さんってば!?」 なんだろう、遂に幻聴まで聞こえるようになっちゃったのかしら。 無理もないわ……SPに胴上げされながらブッキーと御子柴君が仲良く去って行くような幻覚を見るくらいですもの……。 「―――――」 あ、静かになった。やだわホント……こんな格好してるから暑さにでもやられたのかしら……あたしったら……ふ…ふふふ……。 タオルに隠された口元を歪め、虚ろな笑みを浮かべるあたしの眼前に、突如、さっ、と赤い物体が差し出される。 何よこれ……赤くて丸くて足がひぃふぅみぃ……八本。なんだ、ただのタ―――――――!!!!! 「た、タコォォォ!!!???」 あまりの恐怖に意識を取り戻したあたしは、ざざざざっと一気に後ずさる。 ひぃひぃと肩で息をする涙目のあたしの前には、空気で膨らますビニール製のタコの玩具を手に苦笑いする和希の姿が。 「良かった。気がついた?ボーっとしてたからちょっとショック療法を試してみたんだけど」 「か、和希……あんたねぇ……」 怒りにワナワナと身体を震わすあたし。弟でもやっていい事と悪い事があるのよ……!! けど和希はそんな事どこ吹く風という顔で「ありがとう」とタコの玩具を横にいる持ち主らしき少女へと手渡し、あたしの横へと腰掛ける。 「―――で、何かあったの?姉さんがそんな風にボンヤリしてるなんて珍しいけど。それに山吹さんはどうしたの?」 和希のその言葉に怒りも吹き飛び、あたしは理解したくない現実へと引き戻された。 ブッキ―は……。 「……ブッキーなら知り合いの男の子に会ったから、ってちょっと出かけたわ……」 「山吹さんが?……ふーん、姉さんをおいてくなんてらしくないなあ……」 疑わしそうにあたしを見る和希。な、何よ。嘘なんかついてないわよ。 目を逸らすあたしに、和希はやれやれという風に肩をすくめた。そして思い出したかのように。 「あ、そうだ。ごめん、姉さん。やっぱり日焼け止めはコンビニにも置いてなくて……猛暑だから買う人も多いんだろうね」 「……そう……」 日焼け止めなんかもう何の意味もないわよ。だってそれが必要で、一緒に海辺で遊びたかった相手はもう―――……。 サングラスの下の目が潤む。 どうしてだろ…本当だったらこの旅行は目一杯ブッキ―と楽しむはずだったのに……。あたしのドジで台無しになっちゃったから……怒っちゃったのかな……。 いや……いやよ……ブッキー、あたしの傍にいて……。あたしを嫌いにならないで……。あたし……。 あたしはまだあなたにちゃんと伝えてない事が―――。 「あーあ、残念だなあ。姉さんの泳ぎ、僕は好きだからさ。太陽の下で見たかったんだけど」 深海のように暗く澱んだあたしの気持ちを知らないように、和希が突然暢気な事を言い出した。 「山吹さんも言ってたけど、姉さんの泳ぐ姿ってさ、お世辞抜きで本当に綺麗なんだ。覚えてる?姉さんが僕の小さい頃によく読んでくれた童話の―――『人魚姫』みたいに。」 何よ、あたしが落ち込んでるからって慰めてるつもり? 覚えてるわよ。最後、人魚姫が泡になってしまう下り、読みながら和希だけじゃなくあたしまでビービ―泣いちゃって、ママがビックリして飛んできたわよね。 「たまに思うんだよね。あの時、なんで人魚姫は届かないかもしれない想いを諦めてしまわなかったんだろうって。美しい声まで犠牲にして……」 そういうお話なんだから仕方ないじゃない。あたしだって何度人魚姫に同情したか分からないわよ。 何かを犠牲にしてまで賭けた想いが報われずに終ってしまうなんて―――哀しすぎるもの。 「……それほど好きだったんでしょ。王子様が」 「うん。それはすごい事だよね。ただ人を好きだって想いだけで、何を失っても構わないって強さを持つ事が出来るなんて」 ぴくっ、と和希の言葉にあたしの心が反応した。 「そういう心の強さも含めて、人魚姫の泳ぐ姿は綺麗なんだろうなあ。あくまでイメージだけどね」 ニコッ、と和希があたしに微笑みかける。 「姉さんの泳ぐ姿は、そんな人魚姫に似てるよ」 ……随分変な慰め方じゃないの。 それに今のあたしは人魚姫なんかじゃないわ。日に焼けるのを怖がって、太陽の下に出るのを嫌がってる―――どっちかと言えば吸血鬼よ。 そんなの……冗談じゃないわよね。 足にかけられていたタオルを払いのけ、ガバッっと起き上がると、あたしは邪魔な帽子とサングラスを取り去った。 ジッパーを降ろし、パーカーも脱ぎ捨てる。こんなの着てたら暑くて走れないもの! 「和希!ちょっと留守番してて!!」 「分かった。けど―――いいの?日に焼け―――」 「そんなの知った事じゃないわよ!」 砂を蹴り、あたしは走り出す。ブッキーを……あたしの王子様を探して。 今してる事は無駄な事かもしれない。もうブッキーはあたしになんて振り向いてくれないかもしれない。この想いは報われずに終わってしまうかもしれない、 でも、伝えなきゃ、って事だけは分かる。今日何度も伝える事が……ううん、今までだって何度も言おうとしてたのに、照れ臭くて伝えられなかった言葉だけは。 あたしはあなたが―――。 あたしの背後から、和希の呟きが聞こえた気がした。 「大丈夫だよ。きっと姉さんの想いは、泡になったりしないから」 新-190へ
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/518.html
美希が手に取ったのは淡いクリームイエローのニット。 優しい色合いと、女の子らしい可愛らしいデザイン。 (せつなにはちょっと甘過ぎるかしらね?これはどっちかと言うと………) せつなは色白だから、割りと着る選ばない。こう言う色もいいだろうけど、 どちらかと言えば、せつなの顔立ちにはもう少しはっきりした 色の方が映えそうだ。 それか、淡い色ならデザインはシンプルで甘さを抑えたのが…… つらつらと考えていると、いきなり横からキュッと鼻を摘ままれた。 「!!!っちょっと、何よ!」 「もう、美希。今日は誰の服選ぶのか分かってる?」 軽く腕組みしたせつなが憤慨したようにジトっとねめつける。 勿体付けた仕草で、怒ったポーズだけなのは丸分かりだが、 真剣に選んでいたのに文句を言われる筋合いはないと思うのだが…… 「無意識?気付かずやってるなら大したものよ。」 せつなは美希の持っているニットを指差して苦笑する。 どの店でも最初に手に取るのは、パステルカラーの可愛いデザイン。 そして少し悩んだ後、全然違う感じのヤツを選んで私を呼ぶの、 「せつな、これは?」って。 「そんな事ないわよ。現にこれだって……」 美希は、手に取って悩んでいた事を説明するのだが… 「だからね……」 せつなは相変わらず苦笑いで指摘する。 「イマイチだって分かってるなら、わざわざ手に取って思い悩まなくても いいんじゃないの?」 一度や二度なら分かるけど、何回やってるのよ? 「あー……。」 言われてみれば確かにそうなのだが……。 しかし素直に認めるのも癪に触る、と言うか……。 「ま、いいんだけどね。あぁ、でも可愛いわね。これ。」 ブッキーにすごく似合いそう。 ニヤニヤしながらそんな事を言う。 まったく、せつなも扱い辛くなったものだ。 「何よ、憎たらしいんだから。」 「どして?ブッキーに似合いそうだから、そう言っただけじゃない。」 「だーかーらー、何でそこでニヤニヤするのよ。」 「ブッキーがいなくて残念よねー。」 「だからー、そのニヤニヤはね……」 ずっとこんな調子で軽口を叩き合いながら時間が過ぎる。 からかわれてるのに全然腹が立たないのは何故だろう。 せつなは美希が祈里を想っている事を平気でからかってくる。 美希が祈里を大切にしているのを当たり前の事実として。 それが何だかくすぐったい。くすぐったくて、少し嬉しいと感じてしまう。 本当は、告白どころか気持ちを確かめ合う事すらしてないのに。 せつなには、自分達の姿は恋人同士として映っているのだろうか? それとも、仲の良い友人と言うのはこう言うものだと思っているのだろうか。 何にせよ、美希はそんなせつなといると、まるで祈里と公認の恋人同士 のような気分になる。 付き合い始めの頃のせつなは、異世界育ち故の感覚の違いと、 世間知らずから来る天然っぷりで、かなり美希を慌てさせた。 当初は、また手の掛かるのが増えたもんだと頭を抱えたくなったものだ。 しかしながら、もともと頭の出来は良い上に順応性も高かったのだろう。 まだ大分浮世離れしたところがあるとは言え、かなりこちらの常識に追い付いて来た。 付き合い方が分かって来ると、美希にとってせつなはラブとも祈里とも違う、 気楽な関係でいられる事が分かった。 最大級に格好悪い姿を見られてしまったせいもあるだろう。 せつなといると、自分でも驚くほど肩の力が抜ける。 何となく、せつなにはみっともない姿を見せても平気な気がするのだ。 どんな顔を見せても、「美希にはこんな面もある」、 そう受け入れて貰える安心感があった。 勿論、ラブや祈里だって美希の欠点や弱い面を理解してくれてる。 理解した上で、「完璧でありたい」と、努力する美希を姉のように 頼りにしてくれてる。 長い時間を掛けて、培ってきた3人のポジションだ。 ずっとそれで上手くいっていて、それに満足してきた。 相談に乗ったり、頼られたり。時には叱ったり。 でもせつなとの関係には、そう言った『お約束』が一切通用しない。 あくまで対等で、気を使わない、親友。それが今の美希とせつなだ。 「そう言えば、ブッキー今日は合流出来るかも知れないんでしょ?」 「そうね、ちょっとメールでもしてみる。」 リンクルンを手に取ると、美希は初めて既にメールが来ていた事に気付いた。 直ぐに返信を、と思ったが着信時間を見ると一時間近く経っている。 今さら返信しても忙しい中かえって気を使わせるだけかも知れない。 少し迷ってからリンクルンをしまった。 (帰ってからゆっくりメールするか、電話でもいいわよね。) 「ブッキー、今日は無理だって。忙しいみたいよ。」 「そうなの?」 残念ね。そう呟くせつなを見て、美希は祈里が来ない事に 少しホッとしている自分に気付き、戸惑った。 そしてここに祈里がいたらどうだったかな?と、美希は考える。 たぶん、今とは全然違う表情をしているだろう。 もっと緊張して、神経を張り詰めて。 こんな風に、気楽にせつなと笑い合って過ごせはしなかっただろう。 だから……… チクリ…、と針で突いたような罪悪感に似た痛みを感じる。 せつなに指摘されたように、いつも美希は心のどこかで祈里の事を考えてる。 そして、今日は無意識にそれを忘れようとしていたから。 今朝、美希が待ち合わせ場所に行くとせつなはもう待っていた。 彼女は美希に気付かずメールを打っていた。その顔には柔らかな微笑みが 浮かび、相手はラブだろうと自然に想像出来た。 足音を忍ばせ、そっと後ろからリンクルンを覗き込む。 せつながビクッと振り向く。 「もう!脅かさないでよ、美希!」、そう言うせつなの顔が微かに 紅潮していた。メールを見られたかと焦ったのだろう。 美希に見えたのは、恐らく文末に付け加えたであろう一言だけ。 『私も大好きよ。』 からかってやろうと覗きこんだけど、やっぱり止めた。 何だか、自分が虚しくなりそうだったから。 メールを打ってたせつなの、少しはにかんだ微笑み。 彼女はきっと同じ表情で、そして少し頬を染めながらも 真っ直ぐにラブを見つめて同じ台詞をいつも言っているのだろう。 『私も大好きよ。』 正直、羨ましさに気が遠くなりそうだった。 自分が祈里にそんな風に言われる日なんて来るのだろうか、と。 せつなと別れた後、帰る道すがら祈里にメールした。 祈里が来られなくて残念だった事。 祈里に似合いそうな服を見付けた事。 今度は祈里の服を見に二人で出掛けよう、と締め括った。 家に着くと、シャワーを浴び着替える。 今日は楽しかった。自然と頬が緩む。 リンクルンを見るが、まだ祈里からの返信は無い。 (電話してみよっかな?……でも、まだ手が離せないのかな…?) もう一度、祈里のメールを見直す。 「用事を切り上げられそうにないので、今日は無理みたい。」 一行だけの、絵文字一つ無い素っ気ないとも見えるメール。 少し、祈里らしくないように思えてきた。 合流するかも、と言っておきながら行けなかった。 その事に対して、いつもの祈里なら「ごめんなさい」の一言くらい 入れそうなものだ。 それに、せつなの事に全く触れてない。 せつなには祈里からメールは入らなかった。 それなら、「せつなちゃんによろしく」くらいは書いても良さそうなものなのに。 (……アタシ、ひょっとして、マズった?) そもそも、今日の祈里の用事は何だったのか具体的には聞いてない。 家の事、と言ってたから病院の手伝いかと思っていたけど…。 もしかしたら、用事なんてなかったのでは? でも、なんで?理由が分からない……… 美希は自嘲気味な笑みを漏らす。 既に癖になっている。 祈里の何気無い言葉。ふとした拍子に見せる表情。 その中にある祈里の心を深読みしようとするのが。 祈里が何を言いたがっているのか。 何を求めているのか。 言葉に出来ない言葉。表に現せない思い。 それを砂利の中から砂金を選り分けるように、掬い上げてきた。 祈里の求める美希でいるために。 いつだって、完璧でいるために。 (……考え過ぎよ…ね。) ついつい、どんな何気無い素振りにも意味があるのではないかと 身構えてしまう。 確かに、祈里らしくないメールかも。 でも、考えようによっては忙しい中合間を見付けて送ったから 簡単な文面になってしまった。 本当なら、最初から行けないと言ってたんだから、そのままにしておいても 良いだろう。 それを律儀に再度メールを送ってくるのだから、祈里の気遣いと 取れなくもない。 むしろ、その方が自然だろう。 美希は溜め息を付く。 ふわふわとした心地好い疲れに浸っていた心身が、 一気に現実の重力に引き倒される。 リンクルンを眺めながら、美希はイライラしている自分を自覚した。 このメール、多分祈里は美希に何かを読み取って貰いたがっている。 間違いない、と思う。今まで伊達に神経を使って来た訳じゃないから。 でも、美希はそこで考えるのをやめた。 再度、メールを打とうとしていた指を止め、無造作にリンクルンを 放り出す。 (言いたい事があるなら、ハッキリ言えばいい。) 今日、一緒にいたのがせつなでなかったら、美希はメールに一時間も 気付かずにいること自体なかったろう。 直ぐに電話なりメールなりをして、祈里の真意を探り、求める答えを 与えられるように必死になっていただろう。 でも、今日は楽しかったから。 何も考えず他愛ないお喋りをして、ふざけ合って。 疲れる事を考えたくなかったのだ。 祈里が好き。ずっと好きで、祈里の望みを叶えてあげらるのが嬉しかった。 笑顔が見られるだけでよかった。 自分にだけ見せてくれる我が儘を可愛いと思ってた。 それでも……… いつの間にか、ピンと張り詰めていたはずの心の端っこが 撚れてくたびれていた。 ぷくりと血の玉が膨れる程度の傷。意識しなければ痛みを 忘れている時間の方が長い。 けど、傷の中に残った棘は柔らかな血肉を化膿させ、気付けば ぶよぶよとふやけた皮膚の下に膿を溜め込んでいた。 (ねぇ、祈里。アタシ今まで随分頑張ったと思うの。) あなたは、アタシに何をしてくれた? アタシのために、何かを頑張ってくれた事、ある? 祈里が好き。こんな風に思いたくない。 祈里に見返りを求めた事なんてなかった。 好きで与えてただけ。祈里のサインに上手く答えられるのが 幸せだったはずなのに。 どうして、アタシばっかり…… 胸の傷が疼く。熱を持ち、ほんの少しの刺激で血膿が溢れ出しそうだ。 綺麗に洗い流しても、そこには醜く引きつった傷痕が残るだろう。 せつななら、こんな事しない。 言葉はまるで、相手の気持ちを確かめる謎掛けのよう。 仕草の一つ一つに、まるでバレエのマイムのように意味を持たせる。 (もう、いいじゃない。もう、何も考えたくない。) せつなはラブへの愛情を隠さない。 唇から、指先から、まばたきする瞳から、ふとした瞬間に ラブへの想いが零れるのが見える。 せつなの中はラブで溢れている。 曇りの無い、無垢な想いを躊躇いもなくラブに捧げている。 羨んだって仕方ない。 彼女達は彼女達。自分達は自分達だ。 ずっとそうしてきた。誰のせいでもない。 ねぇ、祈里。またアタシが考えなきゃいけないの? アタシが何も気づかなかったら、あなたどうする? アタシ、もう止めるかもよ?ちょっと、疲れちゃったのよね。 好きよ、祈里。でもね……。 あなたが欲しいモノと、アタシが欲しいモノは、違ってきちゃったのかも。 アタシが何も言わなくなったら、あなたはどうするの? その日、美希は結局それ以上メールも電話もしなかった。 そして、祈里からの返信も朝になっても来なかった。 避-552へ
https://w.atwiki.jp/youtubeani/pages/254.html
篤姫 【篤姫ストーリー】 江戸幕府末期、鎖国状態にあった日本が諸外国からの脅威に晒され、動乱を極めていた時代に、歴史の影で活躍した主人公・篤姫をはじめとする女性達の姿に焦点を当てる。ホームドラマ的要素を強め、夫婦や家庭での日常、さらに篤姫が自分にとっての家族(=大奥の女性達)を最後まで守り抜き、その中で一途に平和を願い続ける姿を深く描いてゆく。 篤姫 Youtubeドラマ動画プレイリスト [部分編集] 《各種ドラマ紹介サイト》 ドラマ映画ランキング [部分編集] リンク切れ報告
https://w.atwiki.jp/shfiguarts/pages/245.html
キュアエンジェルベリー(Cure Angel Berry) 「そうよ!だって私、完璧だから…!」 商品画像 情報 登場作品:フレッシュプリキュア! 定価: 商品全高:約○○mm 付属品 手首: 武器:無し 表情: その他:台座 キャラクター概要 蒼乃美希が変身するキュアベリーがパワーアップした姿。シャープな羽と一部コスチュームが変わっているのが特徴。 必殺技『プリキュア・ラビング・トゥルー・ハート』を他のメンバーとあわせて使う。 バリアが張れるようになるなどの特殊能力も身につけている。 商品解説 魂ネイションズ2010で登場。エンジェルピーチに続く発表である。 一部変更されてはいるものの、展示では完全に元のベリーの流用であった。 元のベリーの顔の評価が低いので、今後顔が新規造形され、差し替えできるかがポイントになるかと言われているが、現状発売する様子は皆無。 良い点 悪い点 不具合情報 関連商品 キュアベリー キュアエンジェルピーチ キュアエンジェルパイン キュアエンジェルパッション 写真
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/591.html
映画プリキュア○○スターズ長編 思いよ、届け――プリキュア オールスターズ NewStage 2.1――/makiray(NS1 2 全4話・完結) One Step Beyond ―キュアエコーの方法―/makiray(NS1 全7話・完結) いっしょ ~ プリキュアオールスターズ NewStage 3.0a/makiray(NS3 全5話・完結) Echo, Next Stage -プリキュアオールスターズ 春のカーニバル V1.1-/makiray(全5話・完結) Echo, Back and Forth - みんなで歌うo/~ 奇跡の魔法! Ver.1.1 -/makiray(全6話・完結) プリキュア ドリームスターズ Ver.0.9 -Quartet Branche-/makiray(全10話・完結) Soliste Echo -プリキュア スーパースターズ Ver.1.1-/makiray(全6話・完結) オールスターズメモリーズ Ver.1.1 ~origin~/makiray(全4話・完結) はだしのプリキュア/makiray(プリキュアミラクルユニバース 全10話・完結) Messenger of Light/makiray(プリキュアミラクルリープ 全5話・完結) Juvenile/makiray(デパプリ・夢みるお子さまランチ 全11話・完結)
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1029.html
「あ、蒼乃先輩だ」 「綺麗だよねー。恋人とかいないのかな」 「彼氏いるって噂だけど、実際どうなんだろ」 「それがさ、この間先輩が誰もいない教室で電話越しに相手に『好き』って言ってるの聞いた子がいるみたい。顔赤かったし絶対彼氏だって」 「うっそ。先輩クールなイメージなのに。恋人の前じゃ違うの?」 「えー。やっぱ恋人いるのかなぁ。ショックー」 「気になるよね。どんな人なのかな。誰か見たりしてないの?」 「見た人いないらしい。ほとんど他校の女友達と一緒だって。でも友達もすっごい美人らしいよ」 「私見たよー。ピンク色の髪の人でしょ。なんかちょーお似合いだった」 「お似合いって、女同士じゃん」 「あはは、まあねー。でも先輩なら女好きでもいいかも」 「二年の女の人にも美希さん好きな人いるみたいだよ」 「えー、マジ?」 「あ、美希先輩携帯見ながらドアにぶつかった」 「おでこおさえてる!大丈夫かなぁ」 「なんか最近先輩ぬけてるよね」 「前よりよくない?親しみやすいし。てか涙目ちょー可愛い。私も好きになっちゃったかも」 「はは、ファンクラブ作っちゃう?」 「いいかもそれー」 「あたし入るー」 「私もー」 ――――――― from:パッション [題名]なし [本文] シチュエーションってすごく大事だと思う from:美希 [題名]なし [本文] 何の話? from:パッション [題名]Re: [本文] ブルンと話がついたの 美希を気持ちよくさせるためにはお互いがんばりましょうって from:美希 [題名]意味がわからない [本文] ブルンと何話したの!? from:パッション [題名]Re:意味がわからない [本文] 美希はムッツリだから派手に行きましょうって 今夜は動物です from:美希 [題名]なし [本文] ブルンを悪用しないで・・・ from:パッション [題名]Re: [本文] 何がいい? from:美希 [題名]なし [本文] ・・・ネコ END ~おまけ~
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/953.html
「ごちそうさま。今日も美味しかった!」 山吹家の夕ご飯。 豪勢なご馳走が、次々と平らげられていく。主に巨漢のお父さんによってだけど……。 本当に美味しかった。一口食べただけで、自然と笑みがこぼれおちる。 綺麗で、優しくて、そして、とってもお料理が上手。 わたしは、そんなお母さんが大好き。 三人ぽっちの家族だけど、この料理の腕前のおかげか、食卓はいつも賑やかだった。 何度かダイエットに挑戦してことごとく失敗したお父さんも、お母さんの料理が一番の大敵だと笑っていた。 好きこそものの上手なれ。 楽しそうに調理するお母さんを見て育ったわたしは、それ以外のお手伝いで助ける方法を選んだ。 おかげで裁縫の腕なんかは、見る見る上達していった。 でも、たまには―――― 食後のお祈りを済ませて、後片付けを手伝おうとする。 そんなわたしの申し出を、お母さんは優しく断った。 「色々としなきゃいけないことあるんでしょ。ここはまかせなさい」 「うん。ありがとう、おかあさん」 もう一言言えば、きっとわかってくれる。 でも、その先を口にするのがなんとなく躊躇われて素直に従った。 パタパタと階段を駆け上がって自室に戻る。 大好きなお母さん。唯一欠点があるとすれば――――過保護、なのかな? 最近は、後片付けどころか、その他の家事もみんな一人でやってしまう。頼りにされていないのが、少し寂しいと思った。 わたしの夢を応援してくれているから。それがわかるから、口にはできなかった。 気を取り直して机に向かった。 朝早く起きて犬のお散歩。勉強の予習。 学校から帰ったら、みんなと一緒にダンスのレッスン。 帰ったら動物病院のお手伝い。机の上では学べない、実践的な知識を身に付けるために。 お風呂に入ってご飯を食べたら、後は勉強の復習。残った時間は、医学書やその他の色んな本を読んで知識を深める。 少し前からは想像もできないくらい忙しいスケジュールだけど、とても充実していた。 毎日が楽しくて、自分が活動的に変わっていくのが感じられた。 宿題と復習は終わり。後は日記を書いてから眠くなるまで読書。そんな時だった。 くるっぽー、くるっぽー、くるっぽー リンクルンの着信音。メールじゃなくて電話だった。 以前は犬の鳴き声にしていたのだけど―――― 動物病院のお手伝いが増えてからは、鳩やふくろうなんかの声に切り替えた。 まぎれちゃって、気が付かないことが多かったから……。 えっ? そもそも動物の声にしなきゃいいって? 好きなんだから仕方ないの……。 美希ちゃんかな? ラブちゃんかな? 表示されていた名前は、東 せつな。 せつなちゃんからかけてきてくれることは久しぶりだった。嬉しくなって、急いで通話ボタンを押した。 「こんばんは。うん、大丈夫、まだ起きてたよ。明日? うん空いてる、楽しみにしてるね!」 おやすみなさい、そう言って電話を切った。珍しく興奮気味なせつなちゃんの様子に、わたしの気持ちも自然と弾む。 明日は建国記念日で学校はお休み。ラブとクッキーを焼くんだけど、良かったら一緒にやろうって。 でも、クッキーなんて……。 学校の家庭科の時間を思い出す。 香ばしいを通り越して、焦げ臭い香り。クマにしか見えない真っ黒なパンダさん……。 なんとかなるよね! 読みかけた本を置いて、さっそく作業に取り掛かる。 みんなで作るなら、持っている型だけじゃ寂しいと思ったから。 薄いアルミの板をハサミで切って形を整えていく。次々に新しいデザインの枠が形作られていった。 「ふ~ん、美希ちゃんはラブちゃんから連絡もらったのね」 「そうよ。今日はなんだか楽しそうじゃない? ブッキー」 「だって、せつなちゃんから電話してくれるなんて珍しいし」 「そうなの?」 「えっ?」 「あ、ううん、なんでもない。楽しい一日にしましょう!」 先に美希ちゃんの家に寄ってから、並んでラブちゃんの家に向かって歩き出した。 バラバラに押しかけるのは、返って気を使わせると思ったから。 「いらっしゃい! 美希、ブッキー」 「「おじゃましま~す」」 ノックしたら、すぐにせつなちゃんが扉を開けて出迎えてくれた。 扉の前で待ってたんじゃないかと思うくらいのタイミングだった。 せつなちゃんの凛々しい顔立ちがほころぶ。笑顔でやわらかくほどける。 その嬉しそうな表情は、訪れたわたしたちとって何よりの歓迎だった。 「美希たん、ブッキー、せつな~。材料の準備済んだよ!」 「楽しみね、せつなちゃん」 「ええ、精一杯がんばるわ」 「せつなは頑張りすぎよ。クッキーなんて気楽に焼けばいいの」 「そういう美希が、一番ムキになったりするのよね」 「失礼ね! アタシはお菓子作りくらい簡単に」 「この前、タマネギで泣いてたクセに」 「そう言えば、タマネギをアタシに回したのはせつなだったような」 「美希は澄ました顔より、泣き顔の方が可愛いわよ」 「やっぱり……わざとだったのね!」 「はいはい、喧嘩はそのくらいにして始めようよ」 ふざけあってる美希ちゃんとせつなちゃんが、ちょっとだけうらやましかった。 始めはギスギスしていた二人だけど、似たもの同士なのか気が合うらしく、よくじゃれ合っている。 普段なら混じることができるのに、苦手意識で気後れしてしまう。 調理が始まった。 泡立て器を握ったラブちゃんの手が、ボウルの中で軽やかに舞う。 トロッと溶けた黄色いバターが、鮮やかな手付きで混ぜられてクリーム状になっていく。 普段はとても器用とは思えないのに、どうしてお料理となるとこんなに人が変わるのだろうと思う。 「ブッキー、卵を割って溶いてくれる?」 「うん、わかった」 ボウルの角で卵を割る。割れた卵の中身は、ボウルの外に落ちた……。 「ごめんなさい、手が滑っちゃって。次はちゃんとやるね」 今度は慎重に、ボウルの中の面に叩きつける。ガシャって音と共に、砕けた殻が中身に混ざる……。 「ブッキー、大丈夫?」 「う、うん、すぐに取れるから」 なんとなく察しているラブちゃんと美希ちゃん。二人にバレてるのはわかってる。今さら恥ずかしいとも思わない。 でも、せつなちゃんは知らないみたいだった。カッコ悪いところを見られたくなくて、必死で誤魔化した。 動揺を悟られたくなくて、急いでラブちゃんの泡立てたバターの中に流し込む。 「あぁ! 一気に入れちゃダメ~!」 「えっ? ええっ?」 止めようとするラブちゃんの手と、自分の手がぶつかり合う。 バランスを崩して両方のボウルごとひっくり返してしまった。 「ごめんなさい……」 「平気だよ! 材料多目に用意してるし、始めからやり直そう」 卵とバターでベッチャベチャ。暗澹たる気持ちでお掃除に取りかかった。 せつなちゃんが手伝いながら問いかけてきた。 「もしかして、ブッキーってお料理苦手なの?」 「そうなの……。黙っててごめんなさい」 「気にしなくていいわ。一つくらい苦手なものがあったほうが付き合いやすいもの」 「そこで、どうしてせつなはアタシを見ながら言うのよ……」 「別に? あっ、美希のお鼻に薄力粉が――――」 「えっ? やだっ!」 「今、付いたわよ」 「クッ、はめたわね。この~~!」 せつなちゃんが美希ちゃんをからかいだす。また二人の漫才が始まった。今度はラブちゃんも止めなかった。 気落ちしてるわたしを笑わせようと、みんなで気を使っているんだろう。 でも、そうやってせつなちゃんとふざけている美希ちゃんの姿すらうらやましく思えて、笑う気にはならなかった。 (料理、ちゃんと教わっておけばよかった。引っ込み思案も、やっぱり直ってないのかも……) ラブちゃんが主導で再びクッキー作りを再開する。今度はわたしは手を出そうとしなかった。 せっかくの楽しい時間を自分の失敗で台無しにするわけにはいかない。わたしは成形で役に立とうと決めた。 「ブッキー、一緒にやりましょう」 「えっ? でも、邪魔になるといけないし……」 「大丈夫、肩に力が入りすぎてるだけよ」 せつなちゃんがわたしの手の上から自分の手を被せる。 時々耳にかかる吐息がくすぐったくて、自然に力が抜けていく。 溶いた卵を、三回に分けてゆっくりと混ぜていく。 チョコチップ、アーモンド、バニラエッセンスを混ぜていく。 美希ちゃんがふるいにかけた薄力粉とベーキングパウダーを少しづつ混ぜていく。 ヘラでボウルの底から掬いあげるようにして、しっかりと馴染ませた。 全ての作業は、わたしの手で行われた。 抱きつくようにして、せつなちゃんが上からわたしの両手を握って力加減をコントロールしてくれた。 苦手意識で体が硬直しているだけ。 一度感覚を身体に覚え込ませれば、わたしは必ず上達するからって。 からかうのではなく、呆れるのでもなく、真剣な表情で付き合ってくれたせつなちゃんに感謝した。 小さなことで気落ちしていた自分が恥ずかしくなる。 以前は引っ込み思案で、自分から行動することができなかった。 足りないのは自信。自分を信じること。 苦手なお料理で、そんな自分の欠点がまた出てきてしまっていた。 そんな中、せつなちゃんはわたしを信じてくれた。だから、精一杯がんばろうって思った。 後は型に入れて形を整えて、焼き上げるだけ。 わたしの本領が発揮できるパートだ。 「わっは~、かわいい! これブッキーが作ったの?」 「凄い、単純な形なのに、ちゃんと何の動物か全部わかるわ」 「さすがブッキーね。こういうの作らせたら完璧ね!」 「このまま焼いてもいいけど、どうせならちゃんと絵も描いたほうが可愛いと思うの」 型はあくまで縁取り、動物の輪郭に過ぎない。 千切った生地を棒状に丸めて立体的に仕上げていく。そして、チョコペンを使って絵も入れた。 今度は、わたしがせつなちゃんに教える番。 少ない線で動物を描くには、特徴を極端に強調すること。 飲み込みの早いせつなちゃんは、見事なデザインで作り上げていった。 「ラブちゃんが作ってるのはクマ?」 「犬のつもりなんだけど……」 「美希が作ってるのはブタね!」 「失礼ね! 鳥よ」 「あっ、横から見るのね。羽が鼻に見えちゃった」 みんなでお腹を抱えて笑った。 作ってる本人たちも、最初は怒っていたけど、ついには可笑しくなって―――― 上手なものは誇らしくて。 そうでないものは可笑しくて。 やっぱり、どれも楽しかった。 そして、どれも最高に美味しかった。 お腹も、そして何より、心も。 満たされた気持ちで帰路に着いた。 家の中に入ると、ちょうどお母さんが夕飯の支度を始めようとしていたところだった。 「おかえりなさい、祈里。今日は楽しかったみたいね」 「えっ? まだ何も話してないのに」 「嬉しそうな顔を見たらわかるわよ」 「あのね! おかあさん」 「どうしたの? 急に真剣な顔して?」 「わたしも、おかあさんみたいにお料理が上手になりたい!」 思い切って口にする。お母さんの気持ちはわかってる。 どんなに忙しい時も、お父さんの食事も、わたしの食事も手を抜くことなく作ってきた。 それがお母さんの誇りであることもわかっていた。 でも、わたしもお母さんのような女性になりたいと思ったから―――― 「嬉しいわ。じゃあ、今晩から一緒に作りましょうか?」 「うん!」 お母さんは、少し驚いた表情の後、ニッコリと笑ってそう言った。 その夜から、山吹家の食卓には不恰好な料理がいくつか並ぶようになった。 以前にもまして――――弾む会話と共に。
https://w.atwiki.jp/youtubeani/pages/290.html
ケメコデラックス! 『ケメコデラックス!』は、いわさきまさかずによる日本の漫画作品。 2005年12月号より『月刊電撃コミックガオ!』(メディアワークス)にて連載していたが、『月刊電撃コミックガオ!』の休刊に伴い、『月刊コミック電撃大王』に移籍して連載。 【ケメコデラックス!ストーリー】 夢見がちな高校生、小林三平太は10年前に婚約した美少女のことを思い出していた。ある朝目が覚めると、目の前にケメコと名乗るウェディングドレス姿のブサイクな謎の少女が現れた。彼女は突然、「私がお前のヨメだ」と宣言し結婚を迫る。果たして彼女の正体は…。 ケメコデラックス! Youtubeアニメ動画プレイリスト bookmark_yahoo このページをお気に入りに追加! 【アニメランキングに参加】 > 【動画】 > 【ドラマ・映画】 ケメコデラックス!ケメコデラックス! Youtubeアニメ動画プレイリスト第12話(最終回) 第10話 検索リンク リンク切れ報告 感想・コメント 【アニメランキングに投票】 一日1回クリックお願いしますwww [部分編集] 第12話(最終回) 第12話(最終回) 「ケメコVSキリコ」 【Veoh】 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第11話 「ミシマ」 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第10話 第10話 「花火」 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第9話 「ばとるろわいやる?」 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第8話 「ブラック☆ガール」 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第7話 ピンチのイズミちゃん! 【Veoh】 【B9】 【Tudou】 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第6話 ミシマの女 【Veoh】 【Tudou】 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第5話 戦士の休息 【Veoh】 【Tudou】 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第4話 彼女が水着に着替えたら 【Veoh】 【なんとか動画】 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第3話 ケメコ登校! 【Veoh】 【B9】 【Tudou】 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第2話 小林家の人々 【Veoh】 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 第1話 鋼鉄の花嫁 【Veoh】 【Veoh検索】 【Dailymotion検索】 【Youtube検索】 【Tudou検索】 検索リンク アニメ > 動画 > ドラマ・映画 [部分編集] リンク切れ報告 感想・コメント アニメ感想掲示板 リンク切れは上の報告よりしてください。 ここに書かれても受け付けれません。 名前 このページはケメコデラックス!のYoutube,Veoh,Dailymotion,Daum,Pandora等のアニメ無料動画紹介ページです。 タグ:Youtube,アニメ,ドラマ,動画,映画,wiki,無料,ケメコデラックス! ここを編集 タグクラウド(多い順): 動画 アニメ Youtube 無料 Veoh Wiki Youtbe ドラマ 映画 銀魂 NARUTO とある魔術の禁書目録 ガンダム00 鉄のラインバレル インデックス ef - a tale of memories. TALES OF THE ABYSS テイルズ オブ ジ アビス マリア様がみてる 亡念のザムド OVA クラナドアフターストーリー 夏目友人帳 ティアーズ・トゥ・ティアラ PLAYSTATION Store みなみけ 東のエデン グイン・サーガ クラナド 07-GHOST(セブンゴースト) 咲 -Saki- WHITE ALBUM 天体戦士サンレッド第2期 クイーンズブレイド 玉座を継ぐ者 ドラゴンボール改 ヒゲぴよ あかね色に染まる坂 ONEPICE ワンピース CLANNAD~AFTERSTORY~ キャシャーン Sins CLANNAD ケメコデラックス! 新世紀ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 のらみみ2 純情ロマンチカ2 夜桜四重奏 ~ヨザクラカルテット~ 喰霊 -零- 黒塚 -KUROZUKA- ef - a tale of melodies. エフ ア テイル オブ メロディーズ 美肌一族 ヴァンパイア騎士 Guilty ヒャッコ のだめカンタービレ 巴里編 かんなぎ 屍姫 玄 魍魎の匣 ブリーチ BLEACH 地獄少女 三鼎 みつがなえ 東方アニメプロジェクト ナルト スティッチ! バトルスピリッツ 少年突破バシン 鋼殻のレギオス ONE OUTS -ワンナウツ- とらドラ ミチコとハッチン 黒執事